「青年は荒野をめざす」
五木寛之さんによるジャズ小説
青年はなぜブルーを求め、匂い立つ音を求めるのか
青春群像の傑作です。
書かれた時代背景もあり、今読むと驚くような箇所も
ありますが、人間の本質、ヤミの部分などは変わりません。
そして、主人公の青年が青臭さを捨て、または捨て去られ
ジャズの音に飲み込まれていくのも、きっと現代と何も変わらないのでしょう。
漫画ブルージャイアントに通じるところもある
主人公の向こう見ずなところ、時代の荒波に飲まれて行く様は
ブルージャイアントの主人公によく似ており、どちらのファンでも共感できる
ところではないでしょうか。
いつの時代の青年も、特にジャズ好きな青年は、少しのプライドと
がなり立てるような、スイングするような、またブルーに、哀しみに
閉じ込められるような、幽閉の思想を持つ者です。
この小説のラストはスカッとする
ジャズという音楽は暗く、沼地に誘うような側面がありますが
この小説のラストは、からっとしています。
渇いた世界に錆び付いた風がからまるような、そんなエンディングですが、
決して暗くならず、いささかの希望を胸に終わります。
ジャズにまつわる死と生、ジャズが引き寄せる死と生、
この小説でも、とことん描かれています。
おすすめの1冊です。
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